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きゃたのーつ ver.1.1

エリートぼっちの文芸倉庫

【SS】芝は青い

SS

こんにちは、きゃたぬきですU・x・U

 前回はこちら

catanuki.hatenablog.com

 

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 芝は青い


「やった、ついに完成したぞ。」
市の外れにあるツタに覆われた洋式の一軒家、
その地下室でJは歓喜した。
「旦那様、それは一体、何に使うのです?」
「この機械はある種の移動装置、

それも三次元から二次元、

二次元から一次元へと動くことができるのだ。
見た目で判断する連中とも、これでおさらばできる」

 

人は中身が大事とはいうが、

Jの容姿は擁護出来ないものがあった。
目はシジミ、鼻アーモンドに、たらこ口とは彼のこと。
その上おかめ面に胡麻をまぶしたような顔では、
現代のハイド氏と見まごうのも無理はなく、
それ故、人生一度も女性との交際経験がない。
研究所で、同期女性のティータイムに悪口の種となるならばと、
数年前に一念発起して、郊外へ越してきた。
今は自作の助手ロボットTOMO1号と二人暮らしである。

 

「あちらの世界は素晴らしい。

いたるところに美女、それも人魚、魔女、異星人。

なんでも備わっているじゃないか」
「しかし旦那様、こちらへ戻ることは出来るのでしょうか」
「この装置は一方通行、元へは戻れない。第一、戻る事などないだろう。

あちらの世界では、選択肢次第で誰とでも関係を作れるのだ」
「そう上手く行きますかね」
世話になったと言い残し、早速Jは装置のボタンを押した。

 

次元を超えて早二時間、話しかけているにも関わらず、
誰一人会話イベントが発生しなかった。
街角の路地にしゃがみこんだJは、

思い出したのだ。
二次元の美女が惚れていたのは、
彼ではなく、彼の操作する主人公の男であったことを。
「何と言うことだ、奴らも結局は見た目で判断するろくでなしだったか。
もはや希望は一次元にしかない」
Jは再び装置を作動し、一次元の世界へと姿を消した。

 

その頃、TOMO1号は残された地下室のモニターから、
Jの行動を視認していた。
「さすが旦那様、迅速な判断にて文章の世界へと移られましたな」
ベストセラー作品に介入し、ヒロインと結ばれることになったJに、
静かな賞賛が送られた。

 

一週間後、朝刊の一面にはこう記されていた。
「ベストセラー『大切な壺』のヒロインが、作者の意図に反して登場人物に奪われていた怪事件。明朝体の文章に、ジェイと名乗る登場人物の台詞のみゴシック体が使用され、発覚。
出版社は回収作業を始め、同作品の販売自体を終了する方針…」

 

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以上、またこんど!

次回はこちら!

catanuki.hatenablog.com

きゃたぬき

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